元うつ病患者のふり返り日記

うつ病で会社を9ヶ月間休職した後に復職を果たしました。そんな筆者がうつ病や精神医学についてふり返り考察します。完治に至った闘病記もごらんください。http://snailramp.net/depression/

脳の炎症を抑えてうつを防ぐ

神経炎症仮説を引き続き調べていくうちに面白い本に出会いました。

私が最近、断片的に書き連ねてきたこの仮説について、精神科医である最上氏が平易にまとめています。 しかも脳の炎症を防ぐための食事レシピ付き!

「脳の炎症」を防げば、うつは治せる

「脳の炎症」を防げば、うつは治せる

 

この本で最上氏は神経炎症仮説は世界の精神医学界では既に認められていて、いまだモノアミン仮説にしがみついている日本の精神医学界が古いことを指摘しています。

5年前にこんな本が出ていたとは。。なぜ話題にならなかったのでしょうか?

うつという病気がますます身近になり、メディアなどを通じて、情報も大量に飛びかうようになったなか、まことしやかに広まったのが、うつの原因はこのセロトニンの欠乏だとする説です。

(本文より)

内海氏以外でこの件に言及する精神科医はなかなかおりません。

つまり、薬だけでは不十分とわかっていても、薬しかない、というのが日本のうつ治療の現状です。

(本文より)

こう言った事を書くのは勇気がいると思います。著者の最上氏はロンドン大学に研究員として所属していて、日本で活動をあまりしていないからここまで書けるのかもしれません。

この本では神経炎症仮説ではなく脳の慢性炎症仮説として紹介していますが呼び方が違うだけで内容は同じです。

これまでは多くの人が、うつの原因はセロトニンなどの脳内化学物質の減少だと信じていましたが、どうも、それは真の原因ではなかったようです。代わって、いま、精神医療の最先端で注目されているのが、「うつは”脳の慢性炎症”によって起こる」というものです。 

(本文より)

そして図解などを交えて脳の慢性炎症仮説の仕組みについて平易に、丁寧に説明されています。心理ストレスを受けると脳の炎症の促進され、それを抑えようとするストレスホルモンが体を傷つけていく過程がよくわかります。このブログでも度々登場してきたサイトカインも本の中に出てきます。私が偶然見つけた風邪やインフルエンザで起こる症状がうつ病の時の症状とそっくりというのも医学的には正しいことが触れられています。

 

新たなる希望 〜神経炎症仮説〜 - 元うつ病患者のふり返り日記

風邪の症状からサイトカインにたどり着きました。

 

インフルエンザに罹ってうつ病で寝たきりだった時のことを思い出しました - 元うつ病患者のふり返り日記

インフルエンザの時も怪しいとは思ってましたが。。

 

また最上氏は様々なうつの症状は情報伝達ネットワークの異常と考えられ、慢性炎症は東洋医学の言うところの「未病」ではないかと指摘しています。

確かにこの情報伝達ネットワークを気の流れと言い換えて、その気を鍼で整えるとうつの様々な症状が治るというのは、東洋はり医学会の治療で回復した私にはとてもフィットします。

 

この本ではにうつを治すための”抗炎症”体質を作るレシピやサプリメントを紹介しています。レシピは主にうつ病が少ないとされる地中海沿岸の国々の伝統的な料理をモチーフにしています。即効性はあまり期待できませんが、高価な食材を使っているわけでもなくリスクも無いはずなのでどんどん試してみることができると思います。

 

本の後半の一部ではモノアミン仮説を否定していたのに現在の向精神薬を擁護するような記述が出てきて、おや、と思うところもあります。しかし製薬会社が出すデータを正とし、それに基づけば完全否定はできないのかもしれません。

 

そしてこの本の特筆すべきところはあとがきです。あとがきには短いながらも精神医学のあるべき姿や、患者のうつ病に対して取るべき姿勢について語られています。その内容に私はいちいち頷かずにはいられませんでした。

 

もしかしたら精神医学にも希望はあるのかもしれません。