元うつ病患者のふり返り日記

うつ病で会社を9ヶ月間休職した後に復職を果たしました。そんな筆者がうつ病や精神医学についてふり返り考察します。完治に至った闘病記もごらんください。http://snailramp.net/depression/

著名な作家の鬱に関する考察

 アンドリュー・ソロモンという作家をご存知でしょうか?

日本ではほとんど知られておらず、日本語のwikipediaには載っていませんでした。

以下は英語のwikipediaへのリンクです。

 

Andrew Solomon - Wikipedia, the free encyclopedia

 

私も彼の事はTEDのプレゼンを見るまで知りませんでした。

作家ですが小説を書いているわけではなく、元々は雑誌のライターでノンフィクションの著作が3冊ほどあるだけです。

しかし自身の経験と膨大なインタビューにもとづいて書かれた鬱についての著作「真昼の悪魔」(原題:the noonday demon)が高い評価を得ているようです。

米国のアマゾンでも星の数が多いです。(2015年8月15日時点で4.5)

www.amazon.com

 

そんな彼のTEDでの講演を見ました。「鬱、私たちが共有する秘密」です。 

静かな語り口で作家ならではの独特の視点、表現で鬱について解説していきます。

 

こちらはプレゼンの動画になります。

スマートフォンだと字幕が表示されないかもしれません。その時はPCで見てください。

 

こちらはプレゼンの全文です。

 

 

「鬱の反対は幸せではなく活力だ」というのには大きく頷くものがあります。私も鬱から回復した時に感じたのは幸せというよりは、大きな生命エネルギーです。

しかしそれ以外の鬱についての説明はなんだか偏見を助長するような内容に思えてしまいます。そもそも鬱は心や精神の病気と断じているのは最新の鬱の病理理論からは外れています。

また彼自身は現代の精神医学による治療は酷い、と言いながら薬や精神外科手術で回復した人たちの話を随所に散りばめています。

 

なんだかこのプレゼンを見ると鬱は心の弱さが原因で、ちょっとした気分の変化や精神医学の治療で治せる気分になります。この言いようのない違和感はなんでしょう。

 

みなさんはどう思うでしょうか。

林試の森クリニック

前回のエントリでは「精神医療ダークサイド」という書籍をご紹介しました。

 

精神医療ダークサイド - 元うつ病患者のふり返り日記

 

その中で信頼できるクリニックとして紹介されている林試の森クリニックを調べてみました。

 

院長は石川憲彦さんという方です。

経歴は以下の通りです。

1946年生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。1987年まで東大病院を中心とした小児科臨床、とりわけ障害児医療に携わり、共生・共学の運動に関与。患児らが成人に達し、東大病院精神神経科に移る。1994年、マルタ大学で社会医学的調査を開始し、1996年から静岡大学保健管理センターで大学生の精神保健を担当。同所長を経て、現在は林試の森クリニック院長(石川・高岡[2006]より) 

http://www.arsvi.com/w/in02.htmより

 

検索してみるといくつかご講演されている内容がwebにあがっています。

【公開】第1回 精神医学が見失いかけているもの / 不登校新聞

 

「いま使用 されている薬の9割は必要ないか、むしろ有害」というのが私の考えです。

 

28歳以下のうつ病では、うつ病の治療薬を飲んでいる人のほうが、飲んでいない人より自殺の危険率が高いと言われています。 

 

薬剤費の上昇と比例してうつ病患者は倍増し、また、病院数も同様に増加しています。これが「精神科バブル」の正体だと思います。 

 

日本最高学府の医学部は日本最高の頭脳が集まると同時に、激しい権力闘争が繰り広げられる「白い巨塔」と言われています。もちろん製薬会社との癒着もささやかれています。

そのような組織の出身にも関わらずこのような発言をされるのは相当勇気のいることだと思います。

 

この後は有料の記事のため読めていないのですが、現在の向精神薬のほとんどが役に立たないというスタンスは非常に信頼できる方なのではないかと感じています。薬を使わないとしたらどのような方法でうつ病などの精神病に対処しているのか非常に興味があります。

 

しかし残念ながら林試の森クリニックは診察まで4年待ちだそうです。。

 

 

精神医療ダークサイド

精神医学の問題点は徐々に広まりつつあります。かつては扇情的なアウトローな人たちが糾弾をしていましたが、今では身元のはっきりしたジャーナリストや精神科医までもが告発本を書く事も少なくありません。

今回は読売新聞本社の記者が書いた精神医療の実態を描いた本をご紹介します。

 

精神医療ダークサイド (講談社現代新書)

精神医療ダークサイド (講談社現代新書)

 

内容はかなり強烈です。

前回のエントリで書いた生活保護費を狙った精神医療グループ等かわいいものです。精神科医や看護師による暴行事件や危険な向精神薬の多剤多量処方などの事実を淡々と書いています。

取り上げられている事象がいちいち人間のなせる業では無いので閉口してしまいますね。

 

最後の結論がこうすれば治る、というものでは無いのでうつ病患者には単にショックだけが残る内容かもしれません。信頼できるクリニックとして紹介されている東京都目黒にある試林の森クリニックは診察まで4年待ち出そうです。

 

どちらかと言えばうつ病患者のご家族や関係者向けだと思います。

 

本書の内容は精神病患者の未来が見えるような内容ではありませんが、最初に書いたように扇情的な精神医学批判の先駆者が幾らバッシングしても精神医学界はビクともしないので、いろんな方々が告発するのは大事な事です。

 

ちなみに本書の中では鍼灸で治るうつ病うつ病と言えるのか?、という意見も見られました。根拠がよくわからないので何とも言えないのですが、是非東洋はり医学会の取材をして欲しいものです。

 

著者の佐藤光展さんですがこちらにも寄稿されてますね。

「精神医療ダークサイド」もこちらの記事のような感じで書かれています。

gendai.ismedia.jp

自立支援医療費を狙った精神疾患患者の囲い込み

headlines.yahoo.co.jp

 

精神医学界はホントに腐ってますね。

随意契約を結んだ区の担当者共々、摘発されるべきです。

鍼治療の感想や経緯などを引き続き募集しています

私はうつ病になり会社を休職していましたが、東洋はり医学会の治療で回復する事ができました。

「回復までの経緯を教えていただけないでしょうか」

http://hal-007.hatenablog.com/entry/2014/11/08/021121

こちらのエントリでは東洋はり医学会の治療を受けた感想やうつ病の回復までの経緯を募集しています。
何人かの方からは私と同じようにうつ病が完治したという報告をいただいています。

鍼治療と言うと胡散臭さを感じる方も多いと思いますが、そういった先入観を無くすためにも生の声を集めたいですね。
このブログを見て東洋はり医学会を知り、治療を受けた方はぜひコメントをお願いしたいです!

脳の炎症を抑えてうつを防ぐ

神経炎症仮説を引き続き調べていくうちに面白い本に出会いました。

私が最近、断片的に書き連ねてきたこの仮説について、精神科医である最上氏が平易にまとめています。 しかも脳の炎症を防ぐための食事レシピ付き!

「脳の炎症」を防げば、うつは治せる

「脳の炎症」を防げば、うつは治せる

 

この本で最上氏は神経炎症仮説は世界の精神医学界では既に認められていて、いまだモノアミン仮説にしがみついている日本の精神医学界が古いことを指摘しています。

5年前にこんな本が出ていたとは。。なぜ話題にならなかったのでしょうか?

うつという病気がますます身近になり、メディアなどを通じて、情報も大量に飛びかうようになったなか、まことしやかに広まったのが、うつの原因はこのセロトニンの欠乏だとする説です。

(本文より)

内海氏以外でこの件に言及する精神科医はなかなかおりません。

つまり、薬だけでは不十分とわかっていても、薬しかない、というのが日本のうつ治療の現状です。

(本文より)

こう言った事を書くのは勇気がいると思います。著者の最上氏はロンドン大学に研究員として所属していて、日本で活動をあまりしていないからここまで書けるのかもしれません。

この本では神経炎症仮説ではなく脳の慢性炎症仮説として紹介していますが呼び方が違うだけで内容は同じです。

これまでは多くの人が、うつの原因はセロトニンなどの脳内化学物質の減少だと信じていましたが、どうも、それは真の原因ではなかったようです。代わって、いま、精神医療の最先端で注目されているのが、「うつは”脳の慢性炎症”によって起こる」というものです。 

(本文より)

そして図解などを交えて脳の慢性炎症仮説の仕組みについて平易に、丁寧に説明されています。心理ストレスを受けると脳の炎症の促進され、それを抑えようとするストレスホルモンが体を傷つけていく過程がよくわかります。このブログでも度々登場してきたサイトカインも本の中に出てきます。私が偶然見つけた風邪やインフルエンザで起こる症状がうつ病の時の症状とそっくりというのも医学的には正しいことが触れられています。

 

新たなる希望 〜神経炎症仮説〜 - 元うつ病患者のふり返り日記

風邪の症状からサイトカインにたどり着きました。

 

インフルエンザに罹ってうつ病で寝たきりだった時のことを思い出しました - 元うつ病患者のふり返り日記

インフルエンザの時も怪しいとは思ってましたが。。

 

また最上氏は様々なうつの症状は情報伝達ネットワークの異常と考えられ、慢性炎症は東洋医学の言うところの「未病」ではないかと指摘しています。

確かにこの情報伝達ネットワークを気の流れと言い換えて、その気を鍼で整えるとうつの様々な症状が治るというのは、東洋はり医学会の治療で回復した私にはとてもフィットします。

 

この本ではにうつを治すための”抗炎症”体質を作るレシピやサプリメントを紹介しています。レシピは主にうつ病が少ないとされる地中海沿岸の国々の伝統的な料理をモチーフにしています。即効性はあまり期待できませんが、高価な食材を使っているわけでもなくリスクも無いはずなのでどんどん試してみることができると思います。

 

本の後半の一部ではモノアミン仮説を否定していたのに現在の向精神薬を擁護するような記述が出てきて、おや、と思うところもあります。しかし製薬会社が出すデータを正とし、それに基づけば完全否定はできないのかもしれません。

 

そしてこの本の特筆すべきところはあとがきです。あとがきには短いながらも精神医学のあるべき姿や、患者のうつ病に対して取るべき姿勢について語られています。その内容に私はいちいち頷かずにはいられませんでした。

 

もしかしたら精神医学にも希望はあるのかもしれません。

 

 

うつ病は無くなる?慢性疲労症候群(CFS)

最近は本当に激務でなかなかこちらのブログに時間を割く事ができません。それでも僅かな時間を見つけてはうつ病の原因の新しい仮説、神経炎症仮説について調べています。

 

hal-007.hatenablog.com

 

そして最近になって慢性疲労症候群(CFS)という病気があるのを知りました。そしてその原因についてあのSTAP細胞で一躍有名になった理研が論文を発表していることも合わせて知りました。

慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明 | 理化学研究所

理研が2014年4月に発表した論文になります。 ぜんぜん話題にもならなかったので今まで知る事もありませんでした。

 

慢性疲労症候群とはなんでしょうか?以下は上記のページからの引用ですが、症状からするとほぼうつ病と変わりが無いように見えます。

これまで健康に生活していた人が、ある日突然、極度の疲労により半年以上も正常な社会生活が送れなくなる慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎(CFS/ME)は、通常の診断や従来の医学検査では身体的な異常を見つけることができず、治療法も確立していません。原因として、感染症を含めたウイルスや細菌感染、過度のストレスなど複合的な要因が引き金となり、神経系、内分泌系、免疫系の変調が生じて、脳や神経系が機能障害を起こすためと考えられていますが、その発症メカニズムは明らかになっていません。そのため、患者は家庭や職場、場合によっては受診した医療機関においてさえも、怠けているだけという偏見をもたれることも少なくありません。

 症状はうつ病と同じなのに、慢性疲労症候群という新しい名前の病気として分類されているのはなぜでしょう?

とりあえずそれは置いておいて、理研慢性疲労症候群の原因は何だと言っているのか見てみます。次も前述したページからの抜粋です。

PET検査の結果では、患者の脳内では主に、視床、中脳、橋、海馬、扁桃体や帯状回という部位での炎症が増加しており、健常者と比べて有為な差があることが分かりました(図1、図2)。さらに、各脳部位における炎症の程度とCFS/MEの各症状には相関があり、視床、中脳、扁桃体での炎症が強い場合は認知機能の障害が強く、帯状回や視床の炎症が強い場合は頭痛や筋肉痛などの痛みが、また海馬での炎症が強い場合は抑うつの症状が強いことが明らかとなりました(図3)。これは、脳内の炎症が起こっている場所で脳機能が低下し、CFS/MEにおけるさまざまな症状を引き起こしている可能性を示唆します。

理研は脳内の炎症と慢性疲労症候群の症状には強い相関があると言っています。特に海馬の炎症は抑うつ状態を引き起こすようです。

 

海馬の炎症。。うつ病になった人からわかるのですが感覚的にはちょっとしっくりこないです。うつ病の人のコメントとして「頭が重い」、「頭の中が常にぐるぐる回っている」、「気力がわかない」というものが多いですが、その症状と病理が感覚的に一致しないです。むしろ悪名高いモノアミン仮説が言う神経伝達物質がうまく流れていないと言う方がフィットする気がしてしまいます。

でも理研はそういったこれまでの全く生化学的でない説とは違って淡々とその実験結果で脳の炎症と症状の相関を証明しています。

 

現代科学(化学)ってのはやはりこうでなくてはいけません。

 

ところで私がいままで見聞きしてきた神経炎症仮説はこれらの炎症の原因についてはサイトカインだと言うものが多かったですが、理研はさらにサイトカインを生成するのはマイクログリアやアストロサイトという物質の活性化が影響している指摘していて、それらの物質の活性化状態を可視化することを試みた模様です。

サイトカインですら主原因ではなくグリア細胞が脳の炎症を引き起こす原因だということがわかってきました。グリア細胞アルツハイマーとの関係も指摘されています。もっと研究が進んでうつ病慢性疲労症候群アルツハイマー、そして恐らく認知症も、治るきっかけになればいいなと思います。

 

このブログで紹介している東洋はり医学会の鍼治療がうつ病に効いているのだとしたら、アルツハイマー認知症にも効果がある可能性は十分にありますね。元々そういったことを考えてはいましたが、この理研の実験結果を見てますますその可能性を感じずにはいられません。

 

さてなぜ症状がほとんど同じなのにうつ病慢性疲労症候群は病気として分けられているのでしょう?

私の想像ではこれは単なる縄張り争いのためなのではないでしょうか?うつ病は精神医学界の縄張りなのですが、脳や神経科の専門家はうすうすうつ病は心の病気では無く、脳や神経系の病気だと気づいています。そして精神科の専門家もそれをうすうす気づいています。

しかしまだはっきり慢性疲労症候群の原因が解明されたわけではないので、うつ病との比較もできません。そもそもうつ病は生化学的に何も証明はされていないので比較すら永久にできないでしょう。

私の予想では脳や神経科の専門家によって慢性疲労症候群の病理の解明が進み、外堀が埋められていくとうつ病という病気自体が無くなっていくのではないのかと思います。

うつ病は実は心の病気ではなく脳や神経の病気でした。。とは精神科の専門家は口が裂けても言えません。これまでの向精神薬はいったい何だったのか、説明することができないからです。

 

しかしその時は近づいている気がしてなりません。